吉野家が同業者と手を組む理由
牛丼チェーンの吉野家とファミリーレストラン最大手のすかいらーくが企業の壁を越えて、「吉野家」「はなまるうどん」「ガスト」の3チェーンで使える共通の割引券を発行した。
販売価格は一律300円(税込)。
9月10日から10月21日に店頭で提示するたびに、吉野家で80円引き、ガストで100円引きとなり、はなまるでは天ぷら1個(100~170円)が無料になる。
期間中、何度でも利用でき、2~4回の使用で元が取れる計算だ。
吉野家とはなまるは、昨秋と今春、両チェーン店で使用できる割引の定期券を発行しましたが、4月は好調で、客数は前年同月比4%増、売上高は7%増と大きく伸びた。
「割引定期券」は集客に効果がある。
この認識が広がり、今回はライバルであるすかいらーくにも参加を呼びかける事態となった。
吉野家とはなまるはビジネスマンの需要が多く、客層は大きく重なっているが、同じグループ企業であるため、広く見れば客の流出は発生しない。
一方、ガストは家族客が中心で、吉野家・はなまるとは客層が異なる。
それぞれが補完しあえる関係にあるといえるだろう。
ただし、企業の壁を越えた送客には、もちろんリスクがある。
一方的な送客で終わってしまったり、客数が大して増えずに利益をむしばむだけで終わってしまったり、Win-WinどころかWin-Lose、Lose-Loseとなる恐れもある。
しかし、それでも実施した背景には、外食業界の未来に対する危機感があるようです。
2017年の外食市場は前年比0.8%増。市場の飽和で伸び少ない状態です。
そこで、外食市場を盛り上げるために外食のライバル同士が手を組むことになったそうです。
また、吉野家は「ニクレンジャー」というものを企画しています。
これには吉野屋・ガスト・松屋・ケンタッキー・モスバーガーの5社が参加しています。
具体的な活動内容は今後詰めていくとのことだが、まずは11月29日を「いい肉の日」とし、
この日に向けてニクレンジャーにやってほしいことをSNS上で公募し、販促やイベントなどを実施する考えを示している。
ニクレンジャーの結成で興味深いのは、戦隊の中に吉野家と松屋が存在していることだ。
知っての通り、両社は牛丼チェーンとしてライバル関係にある。
しかし吉野家はそれでも松屋に声をかけた。
吉野家にとって松屋は「競争相手ではなく共創相手」だそうです。
そして松屋はこの申し出を快く応諾し、ライバル同士が手を握る形で
ニクレンジャーが結成されるに至った。
今回、重要なのは、企業の壁を越えて手を組んだことにある。
ライバル関係にない企業が「コラボレーション」という形でタッグを組むことは珍しくないが、ライバル関係にある企業が提携するというのは珍しい。
そこまでしなければ生き残れない時代になっている事に気付かされます。
ただ、これをIT・システム分野でと考えた場合、やはり共創は難しく、コラボレーションの形が現実的かと思いました。